今年2015年は顧客とのコミュニケーションのあり方が大きく変わる年になると思います。弊社が注目しているトレンドを3つ挙げてみました。

 

■スマートフォンをベースにした「クロスチャネル化」が進む

マーケティングチャネルのスマートフォンシフトはさらに進むと思われますが、そこではプッシュ型のチャネルが複線化していきます。

まずLINE。春頃には「ビジネスコネクト」でCRMデータと連携し、メールと同じようにOne-to-Oneメッセージを送信する試みがスタートしそうです。LINEの普及状況を考えるとインパクトは大きいでしょう。そしてアプリのプッシュ通知(モバイルプッシュと呼びます)。日本の場合は米国と比べるとまだユーザーのアプリの利用率が低いのですが、モバイルプッシュはメールと比べても反応が高く、既に米国では大切なチャネルになっています。アプリはLINEと違ってオウンドメディアであることも重要なポイントです。もちろんEメールも引き続き有力なチャネルです。

PCでは現実的なプッシュ型チャネルはいまだにEメールしかありませんが、スマートフォンではそれ以外にLINEとモバイルプッシュが加わるわけです。

チャネル間でメッセージやシナリオの整合性を保つ必要もあるので、一部の先進的な企業では一元化された顧客データベースに基づくクロスチャネルでのコミュニケーション管理が急速に進展することになると思います。

 

■リアルタイムコミュニケーションが当たり前になる

常に身に付けているスマートフォンを中心にしたコミュニケーションでは「今この瞬間」を捉えることがとても大切になります。

今年はGPSデータやビーコンによる位置情報を活用したマーケティングが本格化すると思われますが、そのためのコミュニケーションはリアルタイムであることが当たり前です。
それも単に位置情報によってメッセージを配信するだけでは十分ではありません。 例えばお店の近くにいるからといって、毎日買い物をしてくれる顧客に来店促進クーポンを送っていては意味がないからです。
購買履歴やwebアクセスログなどに基づいて、顧客ごとに最適なメッセージを届ける必要があります。

またEコマースなどでも顧客のweb上の行動に基づいてほぼリアルタイムでパーソナライズされたメッセージを届けることができれば大きな効果を生むことが実証されています。

そうなるとリアルタイムに情報を取得し、瞬時に顧客データとぶつけて処理して最適なメッセージを届けるための仕組みが必要になってきます。ツール間ではAPIを使ったデータ連携が一気に進むでしょう。そして理屈だけでない現実的なリアルタイムコミュニケーションの実行ノウハウを蓄積することが重要になると思います。

 

■パーミッションを見直す年になる

今年は個人情報保護法の改正も予定されています。
これまでの議論の流れを見ていると、顧客の個人情報管理には今まで以上に丁寧な対応が必要になってくるでしょう。(氏名やメールアドレスだけでなく、顧客IDまで個人情報の範疇に含まれる可能性があります。)

違う視点から見ると、企業にとっては顧客が個人情報を預けてコミュニケーショ ンを許可するという「パーミッション」が、今まで以上に貴重な資産になると考 えられます。

一方で、特にLINEやモバイルプッシュのようなモバイルチャネルでは、受け手にとって不要な意味のないコミュニケーションをしていると簡単にブロックされて(つまりパーミッションを失って)しまいます。

プレゼントキャンペーンで大量に登録者を集めても、その後のコミュニケーションに価値を感じられなければパーミッションはあっという間に消えていくでしょう。

もう一度パーミッションの取得から活用の流れを見直し、顧客からのパーミッションに応えて提供する価値が何なのかを明確に定義することが求められるのではないでしょうか。

 

※この機会に、未読の方はこの本を読んでみることを、読んだことのある方も再読してみることをお勧めします。

「パーミッション・マーケティング」セス・ゴーディン(海と月社)

岡本泰治

京都大学卒業後、株式会社リクルートを経て1993年ディレクタスを設立。 航空会社や自動車メーカーなど大手企業のEメールマーケティング戦略を立案・実行し、近年ではマーケティングオートメーション(MA)の導入支援やシナリオ設計、MA導入後のOne-to-Oneクロスチャネル展開設計など、常に最新のソリューションと長年培ってきたノウハウをもとにOne-to-Oneマーケティングを推進。