あけましておめでとうございます。
株式会社ディレクタスの岡本です。

旧年中は大変お世話になりました。2018年が皆さまにとって良い年になりますよう、心からお祈り申し上げます。
本年も株式会社ディレクタスを何卒よろしくお願いいたします。

年始にあたって、弊社が関わるCRMやデータマーケティングの領域で今後どのような環境変化が起きるのか、それに私たちはどう対応すべきなのかを考えてみました。

2018年 CRMの再定義が始まる

■ MAの本格導入が進んだ2017年

2017年は国内で大手企業を中心としてBtoC向けMA(マーケティングオートメーション)の導入が本格化した年でした。
ただ導入が進んだというだけでなく、導入する際のコンセプトが変わりつつある点が重要だと思います。

一昨年あたりまでMAの導入はECなどオンラインビジネスが中心で、「カート放棄メール」に代表されるような1to1のメールマーケティング施策を自動実行することが主たる目的でした。それらの施策は実際に効果があり、そのことがMAの導入を後押ししてきました。

一方で昨年増えてきたのは、オンラインとリアルの全てのタッチポイントでパーソナライズされた顧客体験を提供するというコンセプトの下、CRMデータを統合しコールセンターのCTIやPOS、あるいはSFAなどとも連携する一連のソリューションの一部としてMAを導入する、といったケースです。
LINEビジネスコネクトを使ったLINEによる1to1の実現なども最初から要件に含まれています。
CRMデータの顧客IDはcookieと紐付けられ、アクセスログと共に一つの「箱」に格納されてオンライン広告の配信にもMAによるCRM施策にも使われます。(最近はこの「箱」をアドテク系ソリューションの「プライベートDMP」と区別して「カスタマーデータプラットフォーム=CDP」と呼ぶこともあります。)

■ 2018年CRMのテーマは「クロスチャネル」

実際にはほとんどのMA導入企業でいまだにメールが中心ですし、そのメールにしても十分活用できてないことが多いのが実情です。「MAは導入したものの、メールの鉄板施策を導入しただけでその後はうまく活用できてない」というお話もよく聞きます。

しかしメールとLINEやオンライン広告などを立体的に組み合わせたり、さらに店舗などリアルなタッチポイントでの顧客コミュニケーションまで統合運用するCRMのクロスチャネル展開は間違いなく進んでいくと思います。
この流れに乗ってMAの導入・活用は2018年にさらに加速するでしょう。
私は2015年に出版された「BtoC向けマーケティングオートメーション CCCM入門」の中で、CCCM(BtoC向けのMA)が一過性のブームに終わって十分活用できなかったCRMシステムと同じ轍を踏む恐れもあると書いたのですが、(十分活用できているかどうかは別にして)実際にはこのまま「キャズム」を越えていくのではないかと思います。
IoTの浸透とAI技術の進化によって企業が収集できる顧客データはさらに増加を続け、その利活用は今後の企業活動の大前提になります。オンラインとリアルの融合も待ったなしです。MAであれCDPであれ、企業はデータマーケティングのためのツールを使いこなすことが必須になってきているのです。

一方で、一口に「クロスチャネル展開」と言っても、その実装にはツールの組合せ方やデータ連携方法など多くの課題があるのも事実で、そう簡単ではありません。スムーズな運用のためには組織体制を見直す必要も出てきます。(ここが最大の問題になることもあります)
また、単にチャネルを増やすだけで快適な顧客体験を実現できるとは思えません。例えばメールで実施している施策を単にそのままLINE上で追加するだけでは、短期的には効果が出ても「うるさい」と感じて離反する顧客が増える可能性があります。
チャネルごとの特性を活かしたクロスチャネル・コミュニケーションのためのシステム構築、シナリオ設計や運用のノウハウは国内ではまだあまり確立されていません。
2018年はディレクタスにとってもこのあたりが大きなテーマになりそうです。

■ その先に見えてきた「顧客と繋がり続ける世界」

さらにもう少し俯瞰して見ると、CRMやひいてはマーケティングの在り方そのものを変える大きな波が近づいています。
IoTとAIによる「顧客と繋がり続ける世界」の到来です。

1月3日の日経新聞1面に『アリババと「つながる車」 ホンダ開発、中国開拓』という見出しの記事が載りました。
自動運転車が登場すると人は運転する必要がなくなるので、移動中は暇になります。車自体がネットに繋がるデバイスになれば、人は車内で簡単に買い物したりエンターテインメントを楽しむことができます。
で、車に行先やルートを告げると「了解しました」と答えて連れて行ってくれるわけです。ちょっと懐かしい「ナイトライダー」の世界ですね。
そうなると、車は単に命令を受けるだけでなく「ブレーキパッドが減ってきました。販売店で交換させてください。ついでに定期点検もいかがですか?今ならピットも空いてるようです。」とか「そろそろ車検ですが、買い換えられますか?新型〇〇は今の私より航続距離が100kmも延びているのでおすすめです。」とユーザーに話しかけるようになります。CRMデータと連携していると「今日は奥様のお誕生日ですね。帰り道の花屋で花を買って帰りますか?」などど気を効かせてくれるかもしれません。(それ以前に、そもそも車を所有する必要がなくなる可能性もありますけど)

■ 「顧客と繋がり続ける世界」でのCRMとは?

「つながる車」では車自体が最強のCRMチャネルになるわけですが、そこでの顧客コミュニケーションはCRM施策であると同時に車自体の機能であり、付随するサービスとも一体になっています。
IoTとAIで商品を通じて顧客と繋がり続けるようになると、多くのCRM施策は商品・サービスの一部として埋め込まれ、顧客とのリアルな「対話」(言語によらないものも含む広義の「対話」)に沿って実行されるようになります。

商品自体にモニターやスピーカーがなくても、商品に埋め込まれたセンサーでデータをクラウド側に取得することさえできれば、企業はチャットアプリやスマートスピーカーを通じて顧客とリアルタイムに対話することができます。
商品とクラウドAIがセットで顧客一人一人に専属のサービスパーソンかつセールスパーソンの役割を果たすことになります。

※ちなみに、ここで必要となる顧客との対話のノウハウは、今後本格化するLINEによる1to1コミュニケーションでも必要になってきます。本来チャットアプリであるLINEはメールのようなアプローチでは活かしきれません。顧客と繋がり続ける世界ではバッチ処理型の一方通行でなくリアルタイムで双方向な1to1コミュニケーション、すなわち「対話」が顧客コミュニケーションの基本となるはずです。LINEによる1to1の進化は新しい顧客コミュニケーション手法への扉を開くことになるのではないでしょうか。

戦略論で有名なマイケル ・ポーター教授は2015年の論文「IoT時代の競争戦略」*の中で「接続機能を持つスマート製品の強力な機能や性能は、業界内の競争状況を塗り替えるだけでなく、業界の定義そのものを広げる場合もある。」と指摘されていますが、ビジネスモデルの再定義と共に全ての商品はある種のメディアになりプラットフォームになる可能性があるわけで(例えば車なら移動手段であると同時に移動中に接するメディアであり、移動を起点にあらゆるサービスを提供するプラットフォームになるなど)、そのときCRMやマーケティングのあり方も大きく変わることになると思います。

「顧客と繋がり続ける世界」はもちろん未来の話ではありません。Amazonダッシュボタンや昨年話題を呼んだスマートスピーカー、ZOZOTOWNのZOZOSUITなど、既に私たちはその世界に足を踏み入れています。そういう意味で私は2018年がCRMの再定義が始まる年になるのではないかと思っています。

*「IoT時代の競争戦略」DIAMONDハーバードビジネスレビュー 2015年4月号

岡本泰治

岡本泰治

京都大学卒業後、株式会社リクルートを経て1993年ディレクタスを設立。航空会社や自動車メーカーなど大手企業のEメールマーケティング戦略を立案・実行し、近年ではマーケティングオートメーション(MA)導入支援や、MAと連繋し顧客とリアルタイムな対話を実現するチャットボットサービスをスタート。1to1マーケティングを推進すべく、長年培ってきたノウハウや、常に最新のソリューションを提供する。