こんにちは。ディレクタスの谷米です。
9月18日~19日に開催されたアドテック東京 2013のB-9セッション「EメールがもたらすCRM効果とは?」において弊社代表の岡本がモデレーターを務めました。3名のパネリストを迎えた当日のセッションの様子をレポートさせていただきます。

(株)ディレクタス 代表取締役 岡本泰治
【今CRMはマーケティングの中心になっている】

弊社岡本はまず現在のCRMに大きな影響を与えている要素として「データ」「テクノロジー」「ソーシャル」の3つを挙げました。

「データ」
カスタマーに関して取得されるデータの量と種類が飛躍的に拡大

「テクノロジー」
膨大なデータを分析しセグメントごとのコミュニケーションシナリオを設計してマルチチャネルで自動実行できるマーケティングテクノロジーが徐々に浸透

「ソーシャル」
商品購買時に評判やクチコミをチェックしたり商品の使用感をシェアすることが当たり前になったために、新規顧客獲得のためには既存顧客の満足度を高めることが必要

以上の3つの環境の変化によってCRMがマーケティングの中心になりつつあり、データベースに基づいてプッシュコミュニケーションができる唯一のチャネルとしてのEメールがこれまで以上に重要になってきていると述べました。

(株)スタートトゥデイ
ホスピタリティ・マーケティング本部 本部長 清水 俊明氏
【CRMからCMF(customer friendship management)へ】

スタートトゥデイの清水氏はまず同社が運営するZOZOTOWNの顧客コミュニケーションのコンセプト「CFM(customer friendship management)」について説明しました。 このコンセプトを体現したものの一つがお客様一人一人の行動(購買やサイト訪問)に応じてコミュニケーションを行う「イベントベースド・マーケティング」です。

『お客様がメッセージに最も耳を傾けやすいタイミングでコミュニケーションすることが重要ではないか』、という考え方のもと商品の購買や「お気に入り」への商品追加など、お客様のさまざまな行動をトリガーにして自動的にメールが配信されます。

その内容は単に商品を売り込むものではなく、例えばTシャツを購入したお客様に送られるメールにはTシャツを長く着ていただく為のお手入れ方法の説明が分かりやすく図解されています。

清水氏はこのようなメールはお客様にとって「売り込み」ではなく「親切なコミュニケーション」だと感じられており、実は商品を売り込むだけのメールよりもCVRがはるかに高いことを指摘しました。

ZOZOTOWNでは現在このような自動配信のパーソナライズドメールを130種以上配信しているそうで、これらのメールはソーシャルメディアなどその他のコミュニケーションチャネルと比べても圧倒的に効果が高いということでした。

最後に清水氏がシステム導入に関する質問に応えて、まずCFMというコンセプトが重要でそれを実現するために必要なテクノロジーを導入したのだと話していたことがとても印象的でした。

日産自動車(株)
マーケティング本部 販売促進部 小暮 亮祐氏
【カスタマージャーニーに基づくコミュニケーション戦略】

日産自動車の小暮氏は、見込顧客から顧客になり再購入にいたる一連のカスタマージャーニーに対応する、Eメールを核とした日産のカスタマーエクスペリエンス戦略について話しました。

自動車は高額で検討期間が長く、買い替えサイクルも長い商品です。 そのため過去日産車の購入の有無にかかわらず様々なデータを活用して、お客様ひとりひとりに丁寧で密なアプローチを積み重ねることが将来の購入につながると考えているとのこと。

日産はそのカスタマーエクスペリエンス戦略の実現手段としてEメールをとても重視しているそうで、小暮氏は3つの理由を挙げました。

まず、確かなデータを基にコミュニケーションが可能なこと。メールアドレスに紐づく様々なデータによって顧客ごとに最適なコミュニケーションをとることができます。

実際に検証してみたところ、Eメールマーケティングを実施した見込み顧客の成約率は実施しなかったコントロールグループに比べてかなり高い値となったそうです。

次に“Online”と“Offline”を繋いで効果測定が可能であること。 メールアドレスに紐づくデータをキーにしてオンラインでの接触履歴とオフラインでの購入情報を結び付けることができるため、さまざまなオンラインコミュニケーションの効果を測定することができるのです。

そして最後にメールの効果を基に広告・メディアへの拡張が可能であること。 購入に至った見込顧客のそれまでのメールの反応や広告への反応、属性などを分析し、似通った見込顧客に対するアプローチ方法を最適化することができます。

小暮氏はメールをもっと活用するべきだということを強調し、今後日産としては販売会社のデータとも連携するなどしてさらに精度の高いメールコミュニケーションを展開したいと述べました。

(株)読売広告社
統合プロモーション局 局長代理 小田 信彦氏
【広告代理店の提供する不動産特化型CRMシステム】

読売広告社の小田氏は、賃貸住宅のような検討期間が短い商品のマーケティングおいてもEメールを用いたCRM的手法が非常に有効だとして、自社の提供している賃貸物件専用CRMシステム「VRRES」の事例を紹介しました。

最近の不動産賃貸物件は高層化・大規模化が進み、多様な間取りと属性の部屋を取り揃えていますが、ユーザーにとってはそれらを調べて比較検討するのが大変です。

そこで「VRRES」ではユーザーが会員登録することでさまざまな物件の詳細情報を確認できるようにしました。 ユーザーは検討物件の部屋ごとの詳細情報を分かりやすいインターフェースで確認することができ、不動産会社は会員が登録した情報に基づいて最適と思われるコミュニケーションをとることができます。その主な手段が登録情報に基づいて配信されるセグメントメールです。

小田氏は「VRRES」の導入によって効率よく見込顧客にアプローチして成約率を高めることができた事例を紹介しました。

大規模な不動産賃貸物件はジョイントベンチャーによるものが多く、またマーケティング施策の対象期間も短いため、各社がシステムを開発するのではなく広告代理店がCRMのプラットフォームを提供する意味があるということでした。

EメールがもたらすCRM効果とは?

3名のパネリストの方はそれぞれ異なる事業環境でCRMに取り組まれていますが、ユーザーを中心においてデータに基づいたパーソナライズドコミュニケーションを行うという点は共通していました。

今後カスタマーに関するデータの量と種類がさらに拡大し最適化の精度が上がるにつれて、データに基づくコミュニケーションチャネルであるEメールのCRM効果もさらに大きなものになるのではないかと思いました。

谷米 竜馬

ハワイ大学生物学部を卒業後、京都大学再生医科学研究所にて脳発生の研究により医科学修士号を取得。卒業後は大手ECモール企業にて新規媒体開発やECコンサルタントを経て、現在はCRMに重点を置いたマーケティング戦略の立案に従事。 顧客分析から施策の提案を行い、大手クライアントの売上拡大業務に貢献。