社員ブログ

マーケターの仕事を変える、Data Cloudという選択

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顧客データは揃っているのに、成果が出ない理由

顧客データは揃っているのに、なぜ成果が出ないのか。多くのマーケターが、一度はこの問いに突き当たったことがあるでしょう。CRMには属性、MAには反応、Webには行動履歴——。データはあるのに、つながっていない。だから施策が“噛み合わない”。

CRMには顧客属性、MAにはメールの開封やクリック履歴、Webには行動履歴──それぞれ価値のあるデータが蓄積されているにもかかわらず、それらが“バラバラのまま”活かされていないケースは少なくありません。
たとえば、ある顧客がウェビナーに参加しても、その情報がSales Cloudに反映されず、営業担当者が「初めまして」と声をかけてしまう。また、すでに契約済みの顧客にも新規キャンペーンのメールを送ってしまう。マーケターにとっては「同じ顧客に違う顔を見せている」ような、もどかしい状況です。

 

このような「データのサイロ化(分断)」は、施策の精度だけでなく、顧客体験そのものを損ないます。そして今、Salesforceが提供する 「Data Cloud」 は、この課題を根本から解決する新しいアプローチを提示しています。

Data Cloudとは何か──マーケターにとっての“データ統合の完成形”

Data Cloudは、顧客データをリアルタイムでひとつに束ねる仕組みです。CRM、MA、EC、POS、サポート──企業内に散らばった情報をひとつの顧客像に再構築します。重要なのは、それが“見るためのデータ”ではなく“動かすためのデータ”になるという点です。

 

従来のCDP(Customer Data Platform)と似ていますが、決定的に異なるのは「統合したデータをすぐに施策へ活かせる」という点です。たとえば、Data Cloudで作成したセグメントをそのままMarketing CloudやAccount Engagement(旧Pardot)へ連携し、リアルタイムでメール配信や広告出稿に反映することができます。

 

つまり、Data Cloudは分析のためだけの基盤ではなく、“施策を動かすためのデータ基盤” なのです。さらに、Sales CloudやService Cloudとも双方向でデータが連携するため、営業やカスタマーサポートも同じ顧客情報を参照できます。マーケティング・営業・サポートの各部門でデータが統一され、「ひとりの顧客を全社で見続ける」ことが可能になります。

Data Cloudが目指しているのは、単なるデータ統合ではありません。それは、「顧客をリアルタイムに理解し、全チャネルで一貫した体験を提供するマーケティング」への進化です。

Data Cloudがもたらすマーケティング変革

Data Cloudの導入によって最も大きく変わるのは、「データを“見る”だけのマーケティングから、“動かす”マーケティングへの転換」です。従来のMA運用では、キャンペーンのセグメントを作成するために何度もCSVを出力し、条件を確認しながらリストを更新する──そんな“手作業の積み重ね”が日常でした。しかしData Cloudでは、顧客の最新情報をリアルタイムで取り込み、条件に合致した顧客リストを自動的に更新することができます。マーケターは「集計」ではなく「施策」に時間を使えるようになるのです。

たとえば、夜中にリストを更新していたあの作業。Data Cloudなら、もう必要ありません。顧客の最新データが自動で更新され、条件に合致したリストが常に最新の状態で保たれます。 

  • パーソナライズの精度が大きく向上します

    たとえば、ある顧客が昨日Webで製品ページを閲覧し、翌日に見積依頼を送ってきたとします。Data Cloudであれば、この行動データとSales Cloud上の商談情報を自動的に結び付け、Marketing Cloudへ即座に反映できます。その結果、その顧客には「検討フェーズに合ったナーチャリングメール」をリアルタイムで配信することが可能になります。つまり「顧客が行動を起こす瞬間」に合わせて施策を展開できるようになるのです。

  • ROIを押し上げる“無駄配信を減らす”仕組み

    マーケティングコストを圧迫する最大の要因のひとつは、「不要な配信」です。すでに契約済みの顧客に新規キャンペーンを送ってしまう、あるいは来店直後の顧客に再来店促進メールを送ってしまう──こうしたケースは意外と多く見られます。

    Data Cloudでは、購買・来店・解約・問い合わせといったイベントが発生したタイミングで、その情報が顧客プロファイルに自動的に統合されます。これにより、特定の条件を満たした顧客を配信対象からリアルタイムに除外できるようになります。

    この仕組みにより、重複配信や不適切なメッセージ送付を減らし、結果的に広告費やメール配信コストの効率が向上します。実際の改善幅は企業の運用状況によって異なりますが、「無駄な配信を防ぐことでROIを安定的に押し上げられる」のは確かな効果です。

  • “分析に強い人しか扱えない”時代の終わり

    Data Cloudは、マーケターが自分の手でデータを扱えるよう設計されています。SQLを知らなくても、UIから直感的にセグメントを作成し、施策に反映でき、“データチームに依頼して待つ時間”がなくなります。それだけで、マーケティングのスピードは劇的に変わります。これまでのように「データチームへ依頼 → 数日後にリストが届く」というボトルネックが解消され、スピードそのものが競争力になります。(※ただし、複雑な条件設定やデータ構造の理解には、データ担当者との連携が重要です)

Data Cloudの真価は、データの量や可視化だけではありません。データが自動で動き、施策がリアルタイムに走る──その仕組みこそが最大の価値です。

Data Cloudは、マーケティングを“感覚と経験”に頼る段階から、“データを意思決定に活かす”段階へと進化させる強力な基盤です。ただし、それを「働き方の変革」につなげるには、組織全体でのデータ活用文化の醸成が欠かせません。

導入による実務効果──“データが動く”組織への変化

Data Cloudの導入によって成果を上げる企業は、単に「データを一元管理した」だけではありません。顧客データを“動かす”文化に変えたことが、結果につながっています。

Data Cloudの導入は、単にツールを増やすことではありませんデータが自動で動き、部門を越えて施策が連携する環境をつくることです。それは、マーケティング部門の働き方だけでなく、企業全体の意思決定スピードと顧客対応力を変えていきます。 

「データを見て動く組織」から、「データが動いて人が動く組織」へ。それが、Data Cloudがもたらす最大の変化です。 

マーケターが今から備えるべきこと──Data Cloud時代の新しいリテラシー

Data Cloudが示しているのは、単なる新しい仕組みではありません。それは、マーケティングの基盤そのものをデータ中心に再設計する時代が来たということです。しかし、ツールを導入すれば自動的に成果が出るわけではありません。Data Cloudを真に活かすためには、マーケター自身がデータ構造や運用プロセスを理解し、組織全体を巻き込んで“データ活用の文化”を築く必要があります。

  • データ整備を「マーケ施策の前提条件」として捉える

    Data Cloudの効果を最大限に発揮するためには、まず社内データの整備が欠かせません。ID体系の統一、重複データのクレンジング、データ項目の定義整理──こうした地味な作業が、Data Cloudの精度を決定づけます。

    多くの企業で見られるのは、「元データの粒度がバラバラで統合が進まない」というケースです。つまり、Data Cloudは魔法の箱ではなく、整備されたデータがあってこそ真価を発揮する基盤なのです。

  • マーケターも“データを読める人”になる

    これからのマーケターに求められるのは、「企画力」だけではありません。データの構造や流れを理解し、どの情報がどの施策に影響を与えるのかを判断できる力が重要です。SQLやBIツールの操作までは不要ですが、少なくとも「このセグメントがどう作られているか」「どの指標がどのシステム由来か」を説明できるレベルの理解が必要になります。Data Cloudは、マーケターがデータに近づくきっかけを作るツールでもあります。データリテラシーを持つマーケターこそが、次の時代の競争優位を築く存在になるでしょう。

  • IT部門との“共通言語”を持つ

    Data Cloudは、マーケティング部門だけで完結するツールではありませんSalesforce環境全体にまたがる設計が必要になるため、IT部門との連携が不可欠です。ここで重要なのは、両者が「どんな目的でどんなデータを扱うのか」を共有し、共通のKPIで動くことです。マーケティングが「キャンペーン効果を上げたい」と言い、ITが「セキュリティを守りたい」と言う──この2つは本来、矛盾しません。Data Cloudを軸にすれば、“データを安全に活かす”という共通目的で協働できるようになります。

  • Data Cloud導入は「ITプロジェクト」ではなく「マーケティング変革」

    最後に強調したいのは、Data Cloudの導入は単なるシステムリプレイスではないということです。それは、マーケティングのあり方そのものを変える変革プロジェクトす。顧客理解の深度、施策のスピード、部門連携の密度──そのすべてがデータでつながります。Data Cloudを活用する企業は、「データを集めて分析する組織」ではなく、データを起点に顧客体験をデザインする組織へと進化していきます。Data Cloudの導入は「単なるIT導入」ではなく、「マーケティングの変革」を支える取り組みです。とはいえ、IT部門との連携なくしては成立しません。技術とマーケティングが共通の目的で動く体制づくりが鍵となります。 

まとめ 

Data Cloudは、マーケティングを“勘と経験”から“データと洞察”へ進化させる基盤です。それは、単に施策を自動化するための仕組みではなく、顧客理解と意思決定をリアルタイムに結びつけるための基盤でもあります。マーケターにとって最も重要なのは、Data Cloudの技術的な仕組みを理解することよりも、「このデータをどう顧客体験に変えるか」という視点を持つことです。Data Cloudを効果的に運用できる企業は、「データで動くマーケティング」をより現実的に実現できる可能性が高いでしょう。
その鍵はツール自体よりも、データの質とそれを活かす組織力にあります。Data Cloudを使いこなす企業こそが、これからの時代に「データで動くマーケティング」を実現していくのです。

金子 裕一
株式会社ディレクタス パートナーアライアンス部