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行動経済学と日常の意思決定

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クリエイティブソリューション部の藤井です。
皆さんは、“判断すること、決断すること”は得意ですか?正直に言って、私は苦手です。

例えば、何か買う時、あれこれ悩んだ末に買わなかったり、余計なものを買ってしまったり、あとで「あの時の判断は間違っていたかも…」と後悔することがよくあります。そんなある日、ラジオで「なぜ人はそのように意思決定をするのか?」という話を耳にしました。その番組では、『行動経済学が最強の学問である』の著者、相良奈美香さんが話をされていました。
 
今、この行動経済学はGoogleやAmazon、Netflixなどの大手企業でも注目されており、行動経済学を学んだ人材の争奪戦が繰り広げられているそうです。内容がとても興味深かったので、さっそく本を手に取りました。

その中で強調されていたのは、「人間は、実は非合理的な意思決定をしがちな生き物だ」ということです。

 

人間の非合理的な意思決定

人間の非合理的な意思決定とはどういうものでしょうか。

例えば、職場で新しいシステムの導入が提案されたとき、現状に慣れて心地よく感じている人は「新しいシステムは問題が多いかもしれない」と思い込んでしまいがちです。実際には、新システムが効率的で利益をもたらす可能性が高くても、変化を恐れて導入を避けてしまうことがあります。

また、初対面の人が強面だったり派手な服装をしていたりすると、「この人は怖いかも」「話しかけにくそうだな」と感じて距離を置いてしまいます。しかし、実際にはその人が優しく話しやすい性格だった、ということもありますよね。

 
人間の脳は、得られた情報を先入観や偏見で歪めて解釈してしまい、非合理的な意思決定をしがちで、行動経済学ではこれを「認知のクセ」と呼んでいます。この時、脳は情報を処理するために複数の方法を使っています。その一つが「システム1」と「システム2」という思考モードです。

 

思考モード:システム1、システム2

システム1は、直感的で瞬時に情報を把握する思考モード。
一方、システム2は論理的でじっくり物事を考えてから判断を下す思考モードです。

人間は一日に最大3万5千回も意思決定をしているとされています。その数の意思決定をこなさないといけないため、普段の生活ではシステム1が優位に働くことが多いそうです。それは、食事の選択や服を決めるときも、すべてシステム2のように論理的に考え続けたら、脳がパンクしてしまうからです。
ただし、システム1による瞬間的な判断には、誤りが増えやすいという欠点があります。従って、この2つのシステムが脳にあることを理解し、上手に使い分けることで、選択ミスや判断ミスを減らせるかもしれません。

 
スティーブ・ジョブスも、洋服選びといった日常の些細な決定に脳のエネルギーを無駄にしないため、同じ種類の服を何着も持ち、服を選ぶ時間を最小限に抑えていたそうです。このように、意思決定の負担を減らすための工夫をすることで、脳を重要な判断に集中させることができます。

実際に、このような情報処理の仕組みを多くの企業がマーケティングに活用しています。例えば、Amazonでは「あと1点」という表示で消費者に「すぐに買わなければ」という直感的な反応を促したり、Netflixは次のエピソードを自動再生することでユーザーが深く考えずに次々とコンテンツを見続けてしまうようにしていたりします。このようなマーケティング戦略も、私たちが日常的にシステム1を使っていることを前提にしていると考えられます。

 
私は特にシステム2、つまり物事をじっくり考えることが多く、つい必要以上にシステム2を使いすぎて脳が疲れ果て、誤った判断をしてしまうことが多いのかもしれません。

スティーブ・ジョブスが、意思決定に関する脳のエネルギーを服選びに使わぬよう同じ服を着続けていたように、私もシステム1の活用を多くして、あまり考えすぎず時には直感に頼ることも大切だなと、この本を通じて感じました。

この本には、「認知のクセ」以外にも、私たちが非合理的な意思決定をしてしまうメカニズムについて紹介されています。日々、どのように人間が意思決定を行っているのかに興味がある方には、ぜひ一読をお薦めします。