社長ブログ
株式会社ディレクタスの岡本です。
早いもので2019年も残り51週になりました。
少し遅くなりましたが、本年もよろしくお願いいたします。
2018年、CRMは本来の姿で復権を果たした
私にとって2018年はCRM領域で大きな「うねり」が起き始めたことを感じた一年でした。
今多くの企業が取り組みつつあるデジタルトランスフォーメーション(DX)の大きな目的の一つは、顧客とのあらゆるタッチポイントとバックエンドをデジタルで繋ぐことによって素晴らしい顧客体験を提供することだと言われています。その中核にあるのはもちろん顧客データであり、「素晴らしい顧客体験」は多くの場合商品やサービスをパーソナライズすることによって実現されます。
少し前まではEメールやwebサイト上でしかできなかった1to1のコミュニケーションを実店舗やコールセンター、スマホアプリ、LINEなど色々なチャネルを通じて展開することができ、オンラインとオフラインを融合した新しい顧客体験の提供が可能になってきました。
DXの底流に流れているのは顧客データによる体験の最適化と関係性の構築というCRMの考え方そのものです。
CRMはもともと1990年代に、マーケティングの手法ではなくITを活用する経営戦略のコンセプトとして提示されました。しかし当時は顧客データも購買履歴ぐらいしかなく、パーソナライズを行うテクノロジーもチャネルも限られていたので、結果的に既存顧客への販促手法として細々と生き延びてきたわけです。
そういう意味では、(実際にはCRMという用語が使われていなくても)CRMは本来の姿で復権を果たしたといえるでしょう。
私のような90年代当時からCRMに携わってきた者の目から見ると、MAに代表されるマーケティングテクノロジーが登場し、アクセスログなども使った1to1アプローチを自動化できるようになってきたここ数年は、「やりたかったことが実現できるようになってきた」過程でした。
アイデアはあったけれど色々な制約があって実現できなかったことを、テクノロジーの進化によってようやく実現できるようになったわけです。
ビジョンなきテクノロジー進化の時代
一方でテクノロジーの進化は徐々にマーケターのアイデアと実行力を追い越しつつあるように感じます。
例えばLINEがこれだけ浸透していても多くの施策は従来の広告やメールと同じ発想で、チャット本来の特性が活かしきれているとは思えません。1to1のチャネルもずいぶん増えてきましたが、複数のチャネルを有機的に組み合わせたクロスチャネルコミュニケーションを設計・運用できている例はまだ少ないと思います。
CRMに関して言うと、実現したいビジョンがあるのにテクノロジーが未成熟で実現できないという時代から、テクノロジーが進化してもそれを使って実現したいワクワクするようなビジョンがないという時代に入っているのではないか。
そうこうしているうちに、2020年に導入が始まる5Gは本格的なIoT環境によって社会そのものをさらに大きく変えていく可能性があります。
数多くのセンサーや端末を通じて顧客と「繋がりっぱなし」になる私たちは、「時間や空間の制約なく顧客と直接つながることができたら、本当はどんな顧客体験を提供したいのか?提供できるのか?」という問いの答えを探すことになります。
その問いは、結局「自分たちはお客様にどんな価値を提供したいのか?/提供できるのか?」というより本質的な問いかけに収斂していくでしょう。
2019年という年は足元で一つ一つやりたかったことを着実に実現しながら、2020年以降の本格的なIoT時代に向けた準備をする年になると思います。
その準備には先端テクノロジーを試してみることだけでなく、より本質的な問いかけを自分自身に発してみることが必要になるのではないでしょうか。
この記事を書いた人
岡本泰治 株式会社ディレクタス 代表取締役
京都大学卒業後、株式会社リクルートを経て1993年ディレクタスを設立。
航空会社や自動車メーカーなど大手企業のEメールマーケティング戦略を立案・実行し、近年ではマーケティングオートメーション(MA)の導入支援やシナリオ設計、MA導入後のOne-to-Oneクロスチャネル展開設計など、常に最新のソリューションと長年培ってきたノウハウをもとにOne-to-Oneマーケティングを推進。