マーケティングコラム

Eメール配信システムの最新潮流

マーケティングコラム

近年、Eメールマーケティングが再注目を浴びていますが、その裏側を支えるEメール配信システムも大きな変遷期にあります。
機能面での選択肢が増加しており、当たり前ですが「実現させたいマーケティングを実行するためのEメール配信システム」を選択することが重要となってきています。

そこで、当コラムでは、Eメール配信システムの最新潮流をご紹介します。

Eメール配信システムにおける3つの潮流

  • 1.グローバル化

  • 2.マーケティングオートメーション対応(キャンペーンマネジメント機能)

  • 3.プロダクトの方向性の多様化

1.グローバル化

現在、日本国内のEメール配信システム業界はグローバル化の様相を強めています。

具体的には、以下のようなグローバルESP(E-mail Service Provider)が日本市場に参入してきました。
◆ Responsys
◆ Experian
◆ epsilon
◆ Emailvision

Responsys社

Responsys社は、米国内でExactTarget社と並び最高評価を得ているESPで、日本でも有名なAdobe社のAdobe® SiteCatalyst®の最大のGenesisパートナーの一社でもあります。
Responsys社は、2012年1月にクロスチャネル・キャンペーン・マネージメントシステム『Responsys Interact Suite』の販売パートナー契約を弊社(ディレクタス)およびネットイヤー社と締結し、日本進出を開始しました。9月には日本国内のファーストクライアントを獲得しています。ディレクタスプレスリリース

Experian社

Experian社は、グローバルで『cheetahmail』という配信システムを展開しており、高い評価を得ています。
2010年1月には、エイケア・システムズ社を買収し、さらに2012年4月には、アルトビジョン社を買収することで日本進出を行っています。また、2012年10月9日、日本法人Experian Japan K.K.社、エイケア・システムズ社、アルトビジョン社が統合され、新たにエクスペリアンジャパン社が誕生すると発表されました。
今後、3社が提供してきたEメール配信システムがどのように提供されていくのかが注目されています。

epsilon社

epsilon社は、以前から、グローバルカンパニーのクライアントをサポートするため、日本に拠点を置いていましたが、2012年より日本市場での販売活動を開始しています。

Emailvision社

Emailvision社は、欧州最大のESPの一社で『Campaign Commander』を提供しており、2011年9月にブレインパッド社と販売契約を締結し、日本市場へ本格参入を開始しました。また、Emailvision社は、キャンペーン管理ツール『smartFOCUS』(同ブレインパッド社が販売)を買収し、『Campaign Commander』に統合することで機能強化を図っています。

その他(IBM Unica)

その他にも、IBMが提供するキャンペーンマネジメントシステム『Unica』には、eMessageというEメール配信機能がオプションで追加され、キャンペーンマネージメントシステムとEメール配信システムの統合も図られています。

上述の通り、グローバルで高い評価を得ているESPがここ数年で日本市場への進出を開始しており、日本国内のEメール配信システム市場も大きく変わろうとしています。


マーケティングオートメーション対応(キャンペーンマネジメント機能)

デジタルマーケティング全体での流れの一つであるマーケティングオートメーションの核となるEメール配信システムも生れています。

具体的には、Responsys社が提供する『Responsys Interact Suite』や、Emailvision社が提供する『Campaign Commander』があげられます。
『Responsys Interact Suite』は、直観的なGUIでシナリオ設計を行うキャンペーンマネジメント機能を有し、Responsys社は「Eメール配信システム」ではなく「クロスチャネル・キャンペーン・マネージメントシステム」と表現しています。

Emailvision社は、先述の通り、キャンペーン管理ツール『smartFOCUS』を買収・機能統合することで、キャンペーンマネジメント機能を強化しています。

また、先述の『Unica』の導入に伴う国内ベンダーが提供するEメール配信システムとの連携事例や、今年日本市場に参入したSaaS型キャンペーンマネジメントシステム『Probance』との連携事例も増加しています。

なお、日本での本格参入はまだ行われていませんが、米国でResponsys社に並んで高い評価を受けているExactTarget社は、今年に入ってマーケティングオートメーションのPardot社やパーソナライズドWEBの iGoDigital社を買収するなど、マーケティングオートメーション対応(キャンペーンマネジメント機能)を強化しています。


プロダクトの方向性の多様化

国内ESP各社は、以前は、携帯メール対応、多言語対応、レコメンドメール対応など、各社が近い方向性の中でプロダクト開発を行っていましたが、近年、国内ESP各社のプロダクトの方向性が多様化しています。

例えば、パイプドビッツ社が提供する『SPIRAL』は、「Web開発に最適なPaaS」という表現でWebアプリケーション構築のプラットフォーム化を進めています。

また、エイジア社が提供する『WEB CAS』は、多言語対応のさらなる深化、さらにスマートフォン対応メール作成ツールの提供などを進めています。

トランスコスモス社が提供する『ClickM@iler』は、早くからレコメンドエンジンとの連携やアクセス解析ツールとの連携を進めており、また導入型もサポートしています。

トライコーン社は、『Salesforce』向けアプリケーションを提供するなど、「CRM」をテーマにサービスを提供しています。

シナジーマーケティング社は、2010年にSalesforce社との資本提携を行い、さらに「クラウド型社会知データベース」の開発を進めるなど、業界としても新たな取り組みを行っています。

また、海外では、先述のResponsys社はDSP機能を追加し、Eメールとディスプレイ広告を組み合わせたシナリオ設計を可能としています。

Silverpop社は、2011年にLocation-Based Marketing PlatformのPlacePunch社を買収し、位置情報との連携を進めています。

以上のように、 Eメール配信システムの潮流には、
1)グローバル化
2)マーケティングオートメーション対応(キャンペーンマネジメント機能)
3)プロダクトの方向性の多様化
が起きています。

Eメール配信システムに求められるものが、単純に「メールを配信出来れば良い」という時代は既に終わっており、「Eメールマーケティングの効果を最大化するためのインフラ」、さらには「デジタルマーケティングを高度化させるためのインフラ」へ変わってきており、その中で、機能面(=実現されるマーケティング)での選択肢が増えてきています。 「実現させたいマーケティングを実行するためのEメール配信システム」を選択することが重要となってきています。

※当コラムは、2012年10月24日時点の情報を基にしています。


岡本泰治
京都大学卒業後、株式会社リクルートを経て1993年ディレクタスを設立。 航空会社や自動車メーカーなど大手企業のEメールマーケティング戦略を立案・実行し、近年ではマーケティングオートメーション(MA)の導入支援やシナリオ設計、MA導入後のOne-to-Oneクロスチャネル展開設計など、常に最新のソリューションと長年培ってきたノウハウをもとにOne-to-Oneマーケティングを推進。