マーケティングコラム
こんにちは。ディレクタスの谷米です。
Googleは2013年5月末より、Gmailの受信トレイにタブ機能を導入しました。
件名やコンテンツ、送受信アドレス等から判別し、5つのカテゴリにGmail側で自動的に分類する新機能です。ファーストビューには「メイン」タブがデフォルトで設定されており、タブを切り替えないと他のタブ内のメールを見ることが出来ません。一方で、「プロモーション」タブ内のメールでも、重要メールとして選択した場合(メールの横にある「スターマーク」をクリック)は「メイン」タブにも表示されます。この新機能について、メールマーケティングに携わる米国各社が独自の調査をし、意見を述べています。
米国メールマーケティング関連各社の調査と見解
MailChimp社(※1)では、タブ機能が追加された前後6週間で、1.5億通のメールの開封率を調査しました。その結果、タブ機能追加後の開封率は3週連続で低下(前後比較で約20%程度低下)したと報告しています。また、メールの自動振り分け機能はまだまだ精度が高いとは言えないものの、一度「プロモーション」タブに振り分けられたメールを「メイン」タブに入るよう、送信者側でコントロールすることは難しいとのことです。
ExactTarget社(※2)やResponsys社(※3)の調査では、現在のところタブ機能による開封率とクリック率の低下は確認できておらず、今後の影響を注視すべきであると述べています。
次に、Movable Ink社(※4)は、考えられるデメリットとして「プロモーション」タブ内のメールを確認する時間はユーザー依存となるため、タイムセール等の時間を限定したプロモーションメールの効果が薄れる可能性があると考えています。
一方で、「プロモーション」タブを見るユーザーは、何かを買いたいという意志をもってメールを探すため、「メイン」タブでその他全てのメールに紛れてしまうよりもプロモーション効果が期待できるだろうと、仕様変更のメリットについても言及しています。
更に、GmailユーザーはECサイト利用者の10~20%程度を占めているものの、スマートフォンの利用者拡大が進んでおり、PCでGmailを利用しているユーザーが減少傾向にあるため、PCブラウザや専用アプリのみに対応しているタブ機能の影響は限定的であると述べています。
Experian社(※5)も仕様変更のメリットとして、ユーザーにとって価値のあるメールを送りクリックを得られれば、メールボックス内のより良い位置に表示されるようになるだろうとポジティブな評価をしています。
顧客視点でのコミュニケーション設計がより重要に
今回のGmailの仕様変更は、ユーザー視点に立ったEメールマーケティングを行うべきであるという、当たり前の原則を再確認する良い機会なのかもしれません。 Google社の仕様変更はメールの洪水に悩まされているユーザーの立場に立ったものであり、実際ユーザーとして使ってみると便利だと感じます。Eメールマーケティングを実施する側にも、よりユーザー視点に立ったコミュニケーションの設計が求められるということではないでしょうか。
ユーザーは何気なくメールボックスを眺めて、ふと目についたプロモーションメールを開くのでなく、意識して「プロモーション」タブを開いてメールをチェックすることになります。その限られたタイミングで選択され、見逃さないよう「スターマーク」をつけておきたくなるようなメールを送る必要があります。 タイトルの付け方も大切ですが、ユーザーにとって価値がある、読みたくなる内容であることが最も重要でしょう。
すでにここ数年の間に一斉配信型のメルマガの効果が徐々に低下し、より顧客一人一人に最適化されたメール(嗜好に応じたセグメントメールやOne to Oneメール、カスタマーステイタスや行動に応じたトリガーメールなど)で効果を上げることが、Eメールマーケティングの中心テーマになってきています。 そのようなカスタマーセントリックなコミュニケーション設計の重要性は今後ますます高まってくるのだと思います。
谷米 竜馬
ハワイ大学生物学部を卒業後、京都大学再生医科学研究所にて脳発生の研究により医科学修士号を取得。卒業後は大手ECモール企業にて新規媒体開発やECコンサルタントを経て、現在はCRMに重点を置いたマーケティング戦略の立案に従事。 顧客分析から施策の提案を行い、大手クライアントの売上拡大業務に貢献。