社長ブログ

顧客との対話の時代 CRMはどう変わるのか?

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2026年、CRM30年来の技術的課題がほぼ全て解決される

CRMのコンセプトやLTVの考え方は、1990年代初頭に提唱されました。1993年に出版された『One to Oneマーケティング』は、その源流の一つです。 当時理想とされたのは、顧客一人ひとりを深く理解し、それぞれに最適な提案を行うことで長期的な信頼関係を築く"優秀な店員さん"でした。日本では、サザエさんに登場する三河屋さんが、その例としてよく引き合いに出されていました。

その後約30年にわたってCRMの課題は、そのコンセプトを技術的にいかに実現するかということでした。
当初は、顧客の購買データを処理するためのコンピューティングパワーが決定的に不足していました。数百万人規模の顧客データを処理しようとするとシステムが動かなくなることも珍しくありませんでしたが、この課題は「ムーアの法則」によって予言されたLSIの飛躍的な進化によって解消されていきました。

顧客とのOne to Oneコミュニケーションに利用できるチャネルもDMや電話に限られていましたが、インターネットの登場によって状況が一気に変わりました。
次に課題となったのは、One to Oneのコンセプトを実現するためのパーソナライゼーション技術です。マーケティングオートメーションやレコメンドエンジンの進化により、顧客の行動や状況に応じて、最適なタイミングで最適なコンテンツを届けることが可能になりました。

 

テクノロジーの進化に伴い、今度は運用が新たな課題として浮上してきました。高度化したシステムはマーケティング担当者が扱うにはあまりにも複雑で、導入以上に運用が問題になりました。そのため、CRMの実現にはテクノロジーの導入・運用を支援する体制が不可欠な時代が長く続いてきました。
今まさに、AIの進化がそのシステム運用のハードルを一気に引き下げようとしています。

さらに”優秀な店員さん”には顧客の理解を深めるインタラクティブなコミュニケーションが欠かせません。DMやメールは一方通行のメッセージ送信でした。ここでもAIの進化によって、本格的な双方向コミュニケーションを大規模に実現できる環境が整いつつあります。

2026年は、約30年前に提唱されたCRMのコンセプトを実現するための技術的な課題が、ほぼすべて解決される年になりそうです。
そして同時に、顧客とのコミュニケーションのあり方が大きく変わる年になると思います。

 

顧客との対話を通じた新しいCRMの世界

これからのCRMは、対話による顧客との双方向コミュニケーションを前提としたものになっていきます。LINEやアプリはもちろん、メールにおいてもAIを活用した顧客との対話が可能になります。
現在MAなどを使って顧客に送信されているメッセージは、ほぼ全てが一方通行で終わっていますが(web接客ツールで対話シナリオが組み込まれている場合もありますが、その内容は非常に限定的です。)、今後は顧客との対話を前提としたシナリオへと置き換えられていくでしょう。
より本来の接客に近い形になり、メッセージは単なるおすすめやプロモーションのご案内ではなく、顧客への「問いかけ」へと変わっていくと思います。 

では単なるおすすめやプロモーションのご案内でないとしたら、その顧客との対話によって何を実現するのでしょうか?

まず考えられるのはレコメンデーションの高度化です。
購入履歴やweb閲覧の情報による一方的なレコメンデーションでなく、じかに顧客の今現在の興味・関心を聞き出して、それに応じた商品のレコメンドを行うことができます。
例えば、
「もうすぐ車検ですね。今回は車検を受けられますか?それとも買い替えをご検討されますか?」
「現在お乗りの車がフルモデルチェンジします。ご興味があれば詳しくご案内しますが、いかがでしょうか。」
「来週からセールが始まります。気になる商品はありますか?ゴールド会員特典としてお取り置きも可能ですよ。」
といったアプローチです。


そして最終的には単なる商品のレコメンドにとどまらず、対話を通じて顧客一人ひとりの課題や要望を引き出して、その解決策として商品や活用方法を提案するようになると思います。
例えば自動車なら「今のご家族構成は?」「お子様とどんなところにお出かけになりたいですか?」といった問いかけから顧客が実現したいカーライフの具体的な像を引き出して、そのために最適な車種やオプションを提案するのです。
「この車種なら、ご両親も一緒の旅行の時は3列シートにして7人乗れます。ただスーツケース3個は荷室に収まらないので、このキャリアをつけておいた方がいいですね。」
「冬も旅行されるならスタッドレスタイヤも併せて購入していただいて、夏の間はお預かりできますよ。」
といった具合で、まさに”優秀な店員さん”です。

さらにAIエージェントならば、企業が持つあらゆるデータを駆使して、人間にはできない提案をすることもできます。
顧客から聞きだした家族の身長や荷物の形状と車の設計データを組み合わせて、3Dのシミュレーション画像を作成し、「お子様もこんな感じで座れますから3列目でも窮屈じゃないでしょうし、小さいスーツケースはこんな感じで荷室に収まります。大きな方のスーツケースはこのキャリアにこうやって積めますよ。」といった提案です。

 

これからのCRMでは、過去のデータに加えて顧客の最新の状況やニーズを対話の中で把握し、その解決策として商品や活用方法を提案していくことになると思います。そしてその対話は顧客からの問い合わせやwebサイトへの来訪だけでなく、企業からの問いかけによっても始めることができるのです。
どのようなタイミングで、どのようなトーンで話しかけ、何を聞き、どのような提案につなげるのか。
これからのCRMにおいては、こうしたプロアクティブな対話を通じた新しい顧客体験の設計をしていく必要があるのではないでしょうか。