イベントレポート
2025年11月20・21日にザ・プリンスパークタワー東京(東京・港区)で開催された 「Agentforce World Tour Tokyo 2025 」キーノートに参加しました。本記事では、Salesforce が掲げる「Agentic Enterprise」という新しいMA像や、AIエージェント基盤 Agentforce 360 の最新情報、会場で紹介されたユースケースなどをレポート形式でお伝えします。
Agentforce World Tour Tokyo 2025 とは
「Agentforce World Tour Tokyo」は、セールスフォースジャパンが開催するイベントの中で、もっとも大きな年次イベントです。米サンフランシスコで2025年10月に開催された、「Dreamforce2025」の日本版と位置づけされています。 今回は、世界最大級のAIエージェントイベント「Dreamforce2025」で発表された内容を、日本企業とビジネスパーソン向けに濃縮・パーソナライズ。現地開催とオンラインのハイブリッド形式で提供されました。
本イベントのテーマは、「Welcome to the Agentic Enterprise」です。Salesforce が新しく掲げるキーワードAgentic Enterpriseは、人とAIが共に働く次世代の企業体を表しています。
当日にキーノート会場を訪れると、多くのビジネスリーダーやマーケティング担当者などIT部門の実務者で座席がすぐに埋まり、開演前には満席に。講演冒頭においての報告では、現地参加の登録者13,000名、オンラインを含めると23,000名~24,000名が2日間で参加予定とのことでした。
イベント内では“生成AIが業務に広く活用され始めた今、企業は単にツールを導入するだけでなく、AIと人が同じ基盤上で協働する新しい組織モデルへと移行する必要がある―”とのメッセージが、繰り返し強調されていました。
「ビジネスは世界を変える最大のプラットフォーム。ビジネスの成功と社会貢献を両立したい」と小出 伸一氏は話す。/セールスフォースジャパン代表取締役会長兼社長
(画像:https://www.salesforce.com/jp/news/press-releases/2025/11/20/agentforce-world-tour-tokyo/)
「日常的なタスクはエージェントAIが担い、人は社会的なインパクトを生み出す仕事に集中することが可能になる」と伝える、パーカー・ハリス氏/Salesforce共同創業者兼Slack最高技術責任者
(画像:https://www.salesforce.com/jp/blog/jp-what-is-salesforce-agentic-enterprise/)
パーカー・ハリス 氏が語った「Agentic Enterprise」とは
キーノート基調講演には、Salesforce共同創業者兼Slack最高技術責任者のパーカー・ハリス氏も登壇しました。パーカー・ハリス氏は、以下のようなメッセージを強調。今回のイベントの象徴的なフレーズとして印象に残りました。
“We cannot do it alone. We need very smart people in the field working hand in hand with our customers.”
AIによる業務変革を推進するうえで重要なのは企業が行う単独の努力ではなく、顧客のために知見をあわせ、パートナー企業が連携していく姿勢であるというメッセージです。
加えて、AIエージェントを「かつての業務を置き換える存在」としてではなく、企業の意思決定やプロセスを支える新しいレイヤーとして位置づけるべきだと説明していました。
Agentforce 360:AIエージェントのための統合基盤
今回のイベントの中心トピックとして、日本市場での Agentforce 360 の正式展開が発表されました。
(出典:Salesforce公式リリース https://www.salesforce.com/jp/news/press-releases/2025/11/20/agentforce-360-japan-announcement/)
Agentforce 360 は企業内のデータやアプリケーションを横断してAIエージェントが機能できるようにする統合基盤で、主に以下4つのレイヤーで構成されています。
Agentforce 360 Platform:エージェントを安全かつ大規模に運用する基盤
Data 360(旧 Data Cloud):社内外のデータを統合し、エージェントに文脈・根拠を提供
Customer 360 アプリ群:Sales、Service、Marketing、Commerce などへの適用
Slack などのコミュニケーションレイヤー、エージェントとの対話や社内連携を行うためのハブ
マーケティング領域では、従来のMAツールでは難しかった「リアルタイムで自然言語からの文脈を理解」や「フルジャーニーの最適化」をAIエージェントが担う形が提示されていました。
紹介されたユースケース
デモンストレーションでは実際の国内事例をもとに、Agentforce を活用した複数のユースケースが紹介されました。なかでも、以下の4領域での活用がわかりやすく整理されていました。
営業(Sales)
商談履歴、メール内容、取引先データなどをもとに、次のアクションをエージェントが提案。
マーケティング(Marketing)
セグメント設計からコンテンツ生成、キャンペーン最適化までをAIが支援。
カスタマーサービス(Service)
問い合わせ内容の理解、回答案の生成、関連タスクの作成など、対応プロセス全体をエージェントがサポート。
コマース(Commerce)
購買行動データと在庫情報を統合し、レコメンドやプロモーションをリアルタイムに最適化。
これらは個々のアプリとして完結するのではなく、共通のデータ基盤とエージェントにより部門横断で連携する設計である点が強調されていました。
今後の展望と Salesforce のロードマップ
Salesforce はAgentforce 360 を企業変革の基盤として、継続的に強化していく方針を示しています。特にAIエージェントの「自律性」と「部門横断での活用範囲の拡大」が重点テーマとされており、より高度な業務支援を行えるようガバナンス機能の高度化が予定されています。
Slack を中核とした「エージェントとの対話ハブ」構想も推進されています。将来的には担当者がSlack上で依頼するだけで、データ調査や提案など一連の作業をエージェントが担うワークフローを想定。
さらに、業種・業務ユースケースに対応するエージェントやテンプレート/アクションをパートナーが提供できる「Agentforce Partner Network」を通じて、パートナーエコシステムの拡充を進めています。AppExchange経由での導入やカスタマイズを容易にし、AI活用の展開を加速させる狙いがあります。
AIエージェントが当たり前になっていく過程で、考えたいこと
Agentforce World Tour Tokyo 2025 は、AIエージェントが企業の働き方にどのような変化をもたらすのかを具体的に示したイベントでした。
AIと人が協働する組織モデルは、すでに変革がはじまっています。
自社はどの業務から、どのスコープで変化に取り組むのか――今後のマーケティング・業務改革に携わる上で、AI導入は避けて通れないテーマになりつつあります。この先の指針となる、企業ごとの方向性についてしっかりと固めていく必要を感じました。
Directus では、MA/CRMの導入・運用支援だけでなく、生成AIやAIエージェントの開発・導入を見据えたデータ活用・業務設計のお手伝いも行っています。
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