社長ブログ
最近クライアント企業から取り組みたい(または今取り組んでいる)テーマとしてOne-to-Oneのクロスチャネル展開を挙げられることが増えました。
CRM領域でMAを導入してメールだけで実施していたような施策を他のコミュニケーションチャネルも組み合わせて展開したいというお話です。
■LINE
一番多いのはLINEです。既に公式アカウントで一斉配信はされていて、LINEビジネスコネクトで顧客IDと紐付けてセグメント配信やOne-to-One配信をしたい、といったニーズですね。LINEはEメールを開封しないお客様にも読んでもらえる可能性があるし、全般的にEメールよりも反応が高いと言われています(一概にそうとは言い切れない面もありますが、それはまた別な機会に)。
カート放棄などの行動をトリガーに配信されるOne-to-Oneメッセージは一斉配信よりもさらに高い反応を期待できますし、パーソナライズされたメッセージならブロックされにくい。
LINEのリッチメニューに リアル店舗の会員証機能(バーコード)を持たせている場合など、メールアドレス登録が必須でなくLINEだけでお客様と繋がっているケースも増えています。
Eメール同様にLINEでも大量一斉配信からセグメント、One-to-One配信にシフトしていくと思います。
■アプリプッシュ
アプリプッシュは当然ながらアプリの位置付けによって役割が異なります。アプリ自体がCRMの戦略に組み込まれていて会員証機能やEC機能などがメインの場合は、アプリ単体としてではなくOne-to-Oneコミュニケーション全体の一部としてシナリオを設計する必要があります。アプリダウンロードのハードルは課題ですが、もちろんスマホとの親和性も高いしリアルタイム性もあるのでオウンドのOne-to-Oneチャネルとして重要度が高まっています。
■ダイレクトメール
紙のDMも再評価されつつあります。お客様が一旦目にするという意味ではハガキの「開封率」は100%に近く、モノとして手元に残ることの強みも見逃せません。コストが嵩むのが難点ですが、バリアブルプリントの技術でOne-to-Oneで発送すれば、単価は高くても十分なROIを期待できます。弊社でも、MAを使ってwebでの行動に基づいて「カート放棄DM」などを発送するような新しい取り組みを行なっています。オンラインとオフラインが融合しつつある今、デジタル化によって重要な役割を担うチャネルになると思います。
■SMS
SMSは最近になって日本でも活用が進んでいます。iモードのようなインフラがなかった欧米では、モバイルといえばSMSだったのでとても盛んに使われてきましたが、日本の場合はSMSを飛び越えてモバイルでもEメールの利用が進み、その存在はほぼ忘れられていました。モバイルファーストになった今、電話番号さえあれば送信できるというアドバンテージもあって見直されています。(※パーミッションの取り扱いには注意が必要です)
アウトバウンドコールのフォローや予約のリマインドなどでの活用が増えていて、非常に高い成果を上げているケースもあります。
■web接客ツール
プッシュチャネルではありませんが、新しいところでは日本独特の発展を遂げたweb接客ツールがあります。最近MAとの連携事例も出ていて、一部のツールはMA的な機能を持ち始めています。弊社でも運用支援サービスを始めました。「接客」という切り口で考えるとCRMと連携するのはごく自然な流れだと思います。
■オンライン広告、webパーソナライズ
webサイトのパーソナライズやオンライン広告のターゲティングもあります。これらはMAでなくCDP(Customer Data Platform プライベートDMPと呼ばれてきました)と連携してCRMデータを活用することになりますが、実際にはCRM視点でOne-to-Oneコミュニケーションに組み込んで設計されているケースはほぼないと思います。リターゲティング広告などは見方によってはCRM的なアプローチですが、あくまでもアクイジションを目的とした広告の一部なのでOne-to-Oneとは発想が異なります。広告にしてもwebサイト運用にしても多くの場合目的とKPIが違うので、統合して設計・運用する意味はありませんが、戦略次第ではCRM側に取り込むケースが出てくると思います。
■戦略が全てを左右する
というわけで、お客様とのOne-to-Oneコミュニケーションが可能なチャネルが急激に増え、それらをまとめてコントロールできるツールも普及して「クロスチャネルでの顧客体験の提供」というのが単なるコンセプトワードでなく現実的な話になってきました。
一方で複数の接点で密度高いコミュニケーションを行なう、言い換えるとしつこくメッセージを送ることになるので、お客様にとって関係ない、意味のないメッセージがネガティブな印象を与えてパーミッションをオフにされるリスクはより高まります。
また、例えばLINEのOne-to-Oneでも今のところメールと同じパターンの訴求方法がほとんどですが、チャットツールという性格を考えるともっと違うコミュニケーションが考えられるはずです。本来はそれぞれのチャネルの特性を活かしたコミュニケーションが設計されるべきでしょう。
最も重要なポイントは、このように選択肢が増えて自由度が高くなり、複雑化した分、コミュニケーション戦略が非常に重要になってくるということです。
まずはEメールと同じようなシナリオを新しいチャネルでも同様に展開するだけで各チャネルは別管理という「マルチチャネル」化が進むと思いますが、それだけでも運用はかなり大変です。中にはOne-to-Oneを突き詰めることはしない、という選択肢もあるでしょう。どのチャネルを選択してどのセグメントにどんなシナリオでコミュニケーションを行なうのか。KPIは何なのか。自社の戦略に基づいてしっかりした設計をする必要があります。
そういう意味ではこれからのCRM、One-to-Oneコミュニケーションにおいては戦略の有無、優劣がはっきりと分かるようになると思います。
この記事を書いた人
岡本泰治 株式会社ディレクタス 代表取締役
京都大学卒業後、株式会社リクルートを経て1993年ディレクタスを設立。
航空会社や自動車メーカーなど大手企業のEメールマーケティング戦略を立案・実行し、近年ではマーケティングオートメーション(MA)の導入支援やシナリオ設計、MA導入後のOne-to-Oneクロスチャネル展開設計など、常に最新のソリューションと長年培ってきたノウハウをもとにOne-to-Oneマーケティングを推進。